常陸大宮市の美和地区にある高部(たかぶ)は、高部宿と呼ばれる山間の小さな宿場町です。
今でこそ、営業している店も少なく寂しい街並みですが、いくつか往時の面影をとどめる建造物が残っています。
その中の1つである、「喜雨亭」と附属する庭園「養浩園」の特別公開が7月30日にあったため、見学してきました。
通りに面して建つ三層の楼閣が「喜雨亭」です。
明治時代に建てられた造り酒屋の座敷棟で、3階には「花の友」と、清酒の銘柄が書かれた看板が付いています。
観覧料は500円。この場所の整備や修理に充てられるとのこと。
綺麗に製本された内容充実のガイドブックも貰えるのでお得感があります。
まずは、喜雨亭を見学します。
軒先に、ユキノシタのような模様をした葉のスミレが生えていました。
(後で調べたところ、フイリゲンジスミレのようです。)
つくばいの近くにあったスイレン。
葉の切れ込みがここまで広いのはちょっと珍しい。
どんな花が咲くのか気になります。
玄関から上がると、小さな畳の間(というか通路)があり、二階へと上がる急な階段に続きます。
階段を上がると、視界が開け、細い廊下に囲まれた広間に出ます。
庭園からの風が吹き抜け、暑いものの清々しい気分です。
上の写真の左奥に幾つか見える小さな襖は、収納になっているように見えますが、実は先ほど登ってきた階段と通じているだけで、実用的な意味がありません。
右側にある襖も、外の通りに面した窓があるだけですが、奥にもう1つの間が広がっているかのように感じさせます。
空間を広く感じさせる工夫なのだそうです。
これは三階への階段の裏側。
ここに限らず、壁の至るところに、日本画や、書、和歌などが貼り付けてあります。
文人墨客が集う場所だったようです。
3階に上がります。
先ほどよりさらに狭くて急な階段を上ると、3畳ほどの広さしかない板の間に出ました。
格子状の窓には、市松模様に色ガラスが配置され、差し込む光が不思議な空間を作り出しています。
この3階は、外から見える看板の内側にあたります。
かつては明かりを灯すことで看板が透けて光り、広告塔の役割もあったようですが、戦時中に光が漏れるのを避けたのか、看板の裏側が塞がれて、現在その機能は無いそうです。
今でも夜は暗い高部宿、光る看板と色ガラスから漏れる光は目立ち、異彩を放っていたに違いありません。
後編では、附属する庭園の養浩園について書きます。
【続】