カラスとスローガン

小さな世界から

ホルンフェルスと菫青石

f:id:saiwai326:20230121235947j:image

 ある文献で、久慈川支流の舟生沢で、菫青石を含んだホルンフェルスが見られるという記載を見つけました。

 ホルンフェルスは、堆積岩がマグマが貫入した際の熱を受けて変質した岩石ですが、泥岩由来の場合には菫青石を含む場合があるそうです。

 菫青石はその素敵な名前、見る角度によって色が変わる「多色性」という性質から、以前から興味があった鉱物です。

 今回探しに行く場所のものは、結晶形のみ菫青石の姿を残していて、中身は風化により白雲母などに置き換わった「仮晶」のようです。

 宝石質のものはもちろんムリですが、仮晶でも見てみたいですし、もしかしたら風化していない部分があったりするんじゃないかと淡い希望を持って、探しに出かけました。

f:id:saiwai326:20230121001852j:image

 降り立った場所は、舟生沢が久慈川に合流する付近に広がる河原。

 車を止めて、舟生沢の流路まで歩いてきたのですが、水がありません。伏流しているようです。

f:id:saiwai326:20230121001951j:image

 藪にいるアオジ(野鳥)から「チッ」と舌打ちみたいな声を受けながら、流路を歩いて探すこと約5分。あっさり第1号を発見できました。

 石質は緻密でずしりとした重さを感じます。表面には、小さな菫青石の仮晶が桜の花びらのように散りばめられています。

f:id:saiwai326:20230121003107j:image

 目が慣れると、次々に発見できました。これまで気づかなかっただけなのかもしれません。良いものを選んでお土産にしましょう。f:id:saiwai326:20230121003308j:image

 

 家に帰ってから、よく観察してみました。f:id:saiwai326:20230121173751j:image

f:id:saiwai326:20230121174205j:image

 短柱状の結晶が横向きに露出しているものは長方形または米粒状、垂直に露出しているものは断面が六角形をしていることが分かります。

 やはり、菫青石たる姿は結晶形だけで、中身は白雲母に変わり果てているようです。キラキラしてそれなりに綺麗ではありますが。

 

 隈無く石を見ていると、他より黒っぽく艶のある箇所があることに気づきました。f:id:saiwai326:20230121175451j:image

 ライトで照らしつつルーペで拡大してみると...

f:id:saiwai326:20230121175843j:image

f:id:saiwai326:20230121215345j:image

 透明感があるように見えます。

 これはひょっとして、風化していない菫青石では…!?

 他の鉱物である可能性も否定できませんが、調べた特徴には合致しているように思えるので、本当に菫青石だったら嬉しいです。

 

 …せっかくなので、綺麗な菫青石の紹介を。

 昨年、母校の文化祭に行った際に、地学系サークルの企画で購入しました。(なお、この企画は展示されている標本の量がちょっとした博物館レベルで見ごたえがありました。) 

 菫青石は県外で採集されたもので、一番大きいもので4mmくらいですが、光に当てると透明感があり、ピンセットで転がすと角度によって色が変わる「多色性」が分かる美しい標本です。
f:id:saiwai326:20230121003954j:image

f:id:saiwai326:20230121003458j:image

 ああ、こんなの採ってみたいなぁ。

 

 

【おまけ】

 メノウ拾いの話を。

 ここ最近は、河原に変化を与えるような雨もありませんし、水位も下がりきって、入りやすいところは拾いつくされた感があります。

 砂利から顔を出す真っ赤なメノウの幻想が頭から離れず、悶々としながら仕事をこなした先週でしたが、週末に突撃した河原で運よく赤いのを拾うことが出来ました。念が通じたのか、呼ばれたのか。

f:id:saiwai326:20230121004554j:image

 また、玉川を掘るのにも初めて挑戦しましたが、こちらでは薄い(とにかく薄い…!)欠片がほとんどでした。

 でも、写真中央右の晶洞持ちが拾えたので、来た甲斐がありました。

f:id:saiwai326:20230121221319j:image