水戸市内を桜川という川が流れていますが、その中流域にあたる河和田町に「膳棚帰漁」という景勝地があります。
最後に行ったのは高校生の時だったでしょうか…少なくとも10年は経っているはずです。
ふと、思い出し行ってみることにしました。
歩いて行けない距離でもないですが、時間の都合上、バスを使いました。
「八幡橋」というバス停で下車します。
バス停は岩間街道(県道30号線)沿いにあって、名前のとおり「八幡橋」という古めかしい橋が桜川に架かっています。
橋を渡ってすぐ、脇道に入ります。
敷地のフェンスに「膳棚帰漁」の謂れが書かれた案内板がありました。
以前はこういった看板もなく、地元の古老に「あそこの木の下を左に行って~」なんて道を教えてもらって辿り着いた思い出があります。
宅地化がじわじわと進んではいますが、変わらず田んぼが広がっていました。
このあたりは防犯意識が高いのか、「不審者に注意」系の看板があちこちにあります。
平日の午後にカメラを持ってウロウロしている男としては、あらぬ疑いをかけられて通報されるのではないかとヒヤヒヤします。
道端にキキョウソウ。
ドクダミが楚々とした花を木陰に咲かせていました。
ワレモコウが、草刈りしにくい所だけに。
田んぼの横を通って、薮の切れ目に入ると、川の縁の小径に出て・・・
膳棚帰漁(膳棚)に着きました。
季節もありますが、以前はもう少し開けていて爽やかな場所だったように思います。
木のトンネルの中、桜川が石段状になった岩盤を流れている場所が膳棚です。
清流だったら素晴らしいのですが、残念ながらあまり綺麗な水ではなく、少し排水の匂いがします。
確か、もう少し近づける場所があったような…。
上流側に回り込むと、川縁に密生する篠竹が切り開かれた道(…というかトンネル)がありました。
センニンソウの蔓が垂れ下がって手招きしています。
今日は下は長ズボンですが、上は半袖の軽装。さすがに躊躇します。
それでも「えいやー」と意を決して屈んで飛び込むと、すぽんと膳棚のすぐ横に出られました。
さっきより水音も大きく聴こえて迫力があります。
この日は増水で濁っており見えませんでしたが、この岩盤には甌穴(ポットホール)があります。
小石が岩盤の窪みに入って、水流でグルグル回されて岩が削れ、丸い穴ができるアレです。
昔、貝の化石が見つかったこともあるそうです。
近くの若林橋も見ていきます。
最近は通う人が少ないのか、細い道は両脇の緑に浸食されつつあります。
若林橋に着きました。
車の通れない木造の橋です。
古いように見えますが、現在架かっている橋は比較的新しいようです。
スズメバチが飛んで来たので退散しました。
なんかいた。
道の傍でフタリシズカがひっそりと実をつけていました。
この若林橋周辺を地図で見ると、U字型をした水域があるのが分かります。
出典:地図・空中写真閲覧サービス(国土地理院)
これは、かつて蛇行していた桜川の流路が切り離されてできた三日月湖だと思われます。(古い時代に治水や貯水池としての利用を目的として、人工的に流路を切り離した可能性もあります。)
水が深く溜まっている場所は北西側の一部だけで、ほとんどは湿地になっていました。
暗い林の中に、Uの字のカーブ部分が分かります。未確認生物でもいそうな雰囲気です。
湧水があるのか、水は澄んでいました。
後日調べたところ、この沼地は通称「磁石だめ(池)」というそうです。形をU字型の磁石に例えた言い得て妙なネーミングです。
今では藪に覆われて見る影もありませんが、かつては子供に親しまれた水辺だったのでしょう。
こういうのは心が痛みますね。
帰り道、老婦人とすれ違いました。
「こんにちは。」と声をかけると、「おー、こわいこわい。」と言うので動揺しましたが、歩くのが大変で疲れたとの意味で、ほっとしました…汗
※方言で疲れたことを「こわい」と言います。茨城だけではないようですが。
ちょっとした探検を楽しめたある日の午後でした。